プーチン逮捕されず モンゴル国際刑事裁判所(ICC)の命令を無視! 強制力はないのか

世界

ロシアのプーチン大統領は2024年9月2日、モンゴルを公式訪問しました。
そこで、国際刑事裁判所(ICC)に加盟するモンゴルが、ICCの逮捕状に基づきプーチン大統領の身柄を拘束しませんでした

今回はそんな国際刑事裁判所(ICC)について深掘りをして調べていきます。

この記事を読んでわかること

・国際刑事裁判所(ICC)の設立の経緯
・加盟国について
・国際刑事裁判所(ICC)の強制力について
・過去の逮捕状に従わない事例
・日本での反応

国際刑事裁判所(ICC)とは

引用 https://www.icc-cpi.int

国際刑事裁判所(ICC)とは、ジェノサイド(集団虐殺)、戦争犯罪、人道に対する罪、および侵略犯罪といった重大な国際犯罪を裁くための常設の国際法廷です。
ICCは、国家の司法制度がこれらの犯罪を適切に裁けない場合や、裁判が行われない場合に、補完的な役割を果たすことを目的としています。

1998年に採択された「ローマ規程」に基づき、2002年に設立されました。
ICCは、各国の領域や国民に関係する犯罪に対して管轄権を持ちますが、その権限を行使するためには、該当国がローマ規程に加盟していることが必要です。
また、国連安全保障理事会の要請に基づいて捜査を開始することもあります。

ICCは、世界の平和と安全を保つために、国際社会の中で責任ある行動を促進する重要な役割を担っています。

ICCの設立は、これらの深刻な犯罪に対する国際的な司法機関が長らく求められていた背景から生まれ、国家の管轄権を超えた犯罪を国際的に裁く仕組みを提供するものです。

ローマ規程とは?

ローマ規程とは、国際刑事裁判所(ICC)の設立と運営に関する基本的な枠組みを定めた国際条約です。正式名称は「国際刑事裁判所ローマ規程(Rome Statute of the International Criminal Court)」です。

この規程は、1998年7月17日にイタリアのローマで開催された外交会議で採択され、2002年7月1日に発効しました。ローマ規程は、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪、侵略犯罪の定義と、それらに対するICCの管轄権を明確にしています。また、ICCの運営方法、裁判手続き、被告人の権利などについても規定しています。

加盟国はこのローマ規程を批准することで、ICCの管轄権を認め、自国でこれらの犯罪が発生した場合、ICCの捜査と裁判に協力する義務を負います。ローマ規程は、国際社会における重大犯罪の抑止と国際正義の実現を目指す重要な条約です。

加入国の数について

引用 https://www.icc-cpi.int

ICCには2024年現在、124カ国が加盟しています。これらの国々は「締約国」と呼ばれ、ローマ規程を批准することでICCの管轄に服しています。主な加盟国には、ドイツ、フランス、イギリス、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、日本、そして今回問題となったモンゴルなどがあります。しかし、アメリカ、ロシア、中国、インドなどの主要国はICCに加盟していません。これにより、ICCの管轄範囲が一部制限されることになります。

アメリカが非加盟国な理由

アメリカが国際刑事裁判所(ICC)に加盟していない理由は、いくつかの政治的、法的な懸念に基づいています。

  • 主権への懸念
    アメリカ政府は、ICCが自国の軍人や公務員に対して裁判を行う可能性を懸念しています。アメリカは、自国の司法制度が公正に機能していると主張しており、外国の法廷がアメリカ市民を裁くことは国家主権の侵害とみなしています。
  • 政治的影響力の懸念
    アメリカは、ICCが政治的に利用され、特定の国や国民を不公平に標的にする可能性があると考えています。特に、世界中で広範な軍事活動を行っているアメリカにとって、ICCの捜査や裁判が政治的な目的で行われることを懸念しています。
  • 議会の反対
    アメリカの議会には、ICCへの加盟に対する強い反対があり、特に共和党を中心に反対意見が根強く存在しています。議会は、アメリカ軍の行動がICCの捜査対象になることを強く警戒しています。
  • 独自の外交政策
    アメリカは、ICCの代わりに、独自の外交政策や国際的な連携を通じて、国際犯罪に対処することを好んでいます。アメリカは他国との二国間協定や国連の枠組みを活用して、国際犯罪に対する取り組みを行っています。

これらの理由から、アメリカはICCに加盟せず、代わりに独自の方法で国際正義を追求しています。

そもそも何をする機関?

ICCは主に、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪、そして侵略犯罪という四つの重大な国際犯罪を捜査し、裁く機関です。これらの犯罪が発生した際に、ICCは独自に捜査を行ったり、加盟国や国連安全保障理事会からの要請を受けて捜査を開始します。また、被害者の証言を基に裁判を進め、罪が証明された場合には適切な刑罰を科すことができます。ICCは、国家レベルでの司法制度が機能しない場合や、公正な裁判が行われない場合に補完的な役割を果たすための国際的な司法機関です。

ICCの命令に従わない場合の強制力

ICCの命令には、法的拘束力があります。例えば、ICCが発行した逮捕状を無視する場合、その対象国や人物は国際社会からの批判や制裁に直面する可能性があります。ただし、ICCには独自の警察力がなく、命令の執行は加盟国に依存しています。したがって、加盟国が協力を拒否する場合、命令の実行は困難になることもあります。また、加盟国が裁判所の決定を尊重しない場合、国際的な信用を失うだけでなく、国連安全保障理事会による制裁の可能性もあります。ただし、実際に制裁が科されるかどうかは、国際的な政治的背景に大きく依存します。

過去の逮捕状に従わない事例

オマル・アル=バシール(スーダン元大統領)

オマル・アル=バシールは、スーダンの元大統領であり、ICCから2009年と2010年に逮捕状が発行されました。彼はダルフール紛争におけるジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪で告発されました。しかし、スーダン政府は逮捕状を拒否し、バシール自身も国際社会に対してICCの権限を否定しました。その後もバシールは数年間、他国を訪問しましたが、逮捕されることはありませんでした。多くの国がバシルを拘束する義務を果たさず、特に彼が訪問したアフリカのいくつかの国では、彼に対する逮捕状が無視されました。

出典 https://www.cnn.co.jp/world/35025747.html?ref=rss

引用 https://www.newsgawakaru.com/news/2307/18_19

サイフ・アル=イスラーム・ムアンマル・アル=カッザーフィー(リビア)

サイフ・アル=イスラーム・ムアンマル・アル=カッザーフィーは、リビアの元指導者ムアンマル・カダフィの息子であり、ICCから戦争犯罪の容疑で逮捕状が発行されました。しかし、カダフィがリビア国内で拘束された後も、リビアの当局はICCに彼を引き渡すことを拒否しました。リビア当局は、彼を国内法に基づいて裁く意向を示し、ICCの要求を無視しました。

出典 https://www.theguardian.com/world/2011/jun/27/muammar-gaddafi-arrest-warrant-hague

引用 http://www.bbweb-arena.com/users/et/libya/libya.htm

アフリカ諸国の反発

いくつかのアフリカ諸国は、ICCがアフリカの指導者ばかりを標的にしていると主張し、ICCからの逮捕状に協力しない姿勢を示してきました。これは、ICCの逮捕状に対する従わない事例が多く発生する背景の一つです。

まとめ

これらの事例は、ICCが国際的な司法機関としての権限を行使する際の課題を浮き彫りにしています。特に、加盟国や他の国々が協力しない場合、ICCの命令が効果的に執行されないことがあるため、国際刑事司法の限界と課題が指摘されています。

プーチン大統領逮捕について日本の反応

逮捕状を無視することで否定的なコメントもありますが、歴史的背景や地理的な問題などを鑑みて、擁護するコメントも多数あります。

まとめ

国際刑事裁判所(ICC)は、国際的な正義を追求するために設立された重要な機関であり、深刻な国際犯罪に対する責任を問う場を提供しています。多くの国が加盟し、国際社会全体の平和と安全に貢献する一方で、いまだに加盟していない国も存在し、その拘束力には限界があります。
日本もICCに積極的に参加し、国際法の遵守と人権保護に貢献しています。
今後もICCの活動と各国の協力が、国際正義の実現において重要な役割を果たすでしょう。

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